
ブラジルを代表するバンド、ANGRA(アングラ)。
2025年8月での活動休止を発表しており、
活動休止前最後のジャパンツアーも、
大いに盛り上がりました。
日本でも大きな人気を誇ったバンドなだけに活動休止は残念ではありますが、
数々の名盤達と今回の来日公演は、
ファンの心にずっと残っていくことでしょう。
今回の公演ですが名盤として名高い
TEMPLE OF SHADOWS「テンプル・オブ・シャドウズ」を中心としたセットリスト。
そこで今回はこの名盤について語っていきます。
TEMPLE OF SHADOWSは2004年9月6日に5thアルバムとしてリリース。
約20年前で僕がタワレコでHR/HM担当として働いていた頃ですね。
内容はもちろん美しいアートワークも含め、
衝撃的だったのを覚えています。
エドゥ・ファラスキを迎えて作成され、
正に復活作となったREBIRTHに続く1枚で、
11世紀十字軍騎士のストーリーで、
十字軍の騎士、シャドウ・ハンターを描いたコンセプト・アルバム。
コンセプト・アルバムと言うと難解なイメージがありますが、
ピアノとストリングスが美しく、
これから始まる物語を想起させてくれる「DEUS LE VOLT!」から始まり、
疾走する「SPREAD YOUR FIRE」になだれ込んでいきます!
メタリックに疾走する展開は当然ですが、
中盤のコーラス、クワイアも美しく、
正確無比なツイン・ギター、
そして短いながらもメロディアスで耳に残るギター・ソロと、
アルバムを代表する1曲となっています。
「DEUS LE VOLT!」からの流れは至高で、
続けて聴くことで曲の素晴らしさが何倍にもアップします。
DEUS LE VOLT!
SPREAD YOUR FIRE
3曲目の「ANGELS AND DEMONS」は、
エドゥ加入以降のプログレッシヴなスタイルが存分に発揮され、
特にイントロは特に顕著でテクニカルで緊張感にあふれた、
かなりプログレ・メタルな曲となっています。
ギター・ソロはキコとラファエルの掛け合いが素晴らしく、
エドゥの伸びやかな歌声も作品の説得力を上げています。
ANGELS AND DEMONS
4曲目の「WAITING SILENCE」は打って変わってミドルチューンとなりますが、
ここでもエドゥの素晴らしい歌唱が光り、
葛藤するシャドウ・ハンターの心情を歌い上げます。
WAITING SILENCE
5曲目の「WISHING WELL」はかなり爽やかなバラード曲で、
どこかJ-POPにも通ずるようなサウンドで、
エドゥの作曲能力の高さを感じることが出来ます。
Wishing Well
6曲目の「THE TEMPLE OF HATE」はカイ・ハンセンがゲストヴォーカルで参加。
曲もプログレッシヴに疾走するものとなっており、
ANGRA史上最速の曲とされています。
カイの声に賛否はありますが、
妻と2人の子を失ったシャドウ・ハンターの心情、
憎しみが存分に発揮されています。
THE TEMPLE OF HATE
超絶テクニカルなギター・バトルに、
壮絶ツーバスのアキレス・プリースターも素晴らしい!
7曲目の「THE SHADOW HUNTER」はフラメンコ風のギターで幕を開け、
ヘヴィなギターとパーカッシヴなサウンドが混ざり合う8分にも及ぶ大曲!
民族音楽とメタルが高次元で融合し、
低い声のエドゥも魅力的でその力量が見て取れます。
THE SHADOW HUNTER
8曲目の「NO PAIN FOR THE DEAD」は、
オーストリアのシンフォニックメタル・バンド、
Edenbridge「エデンブリッジ」のヴォーカル、
サビーネ・エデルスバッカー をフィーチャー!
エドゥとの掛け合いは本当に美しく、
非常にドラマティックでオペラティックな佳曲となっています!
NO PAIN FOR THE DEAD
9曲目の「WINDS OF DESTINATION」は、
BLIND GUARDIANのハンズィ・キアシュがゲスト参加。
ダークなイントロから疾走し、
ハンズィの歌声ともばっちりマッチ!
途中スローテンポになるなど、
展開の読めない複雑な曲ではありますが、
中盤のピアノ・パート、
そして曲のハイライトであるギター・ソロでは、
最高に盛り上がります!
WINDS OF DESTINATION
10曲目の「SPROUTS OF TIME」はボサノヴァな曲で、
メタルなイメージとは遠いかも知れませんが、
民族音楽を取り入れた非常に非常にANGRAらしい曲。
哀愁に満ちたサビが心に刺さります。
SPROUTS OF TIME
11曲目の「MORNING STAR」は7分を超える大曲で、
爽やかなサウンドから激しいギターへと繋がっていく、
オペラのようなプルグレ・メタル曲。
MORNING STAR
12曲目は「LATE REDEMPTION」ではブラジルの大御所ミルトン・ナシメントを迎え、
ポルトガル語での歌唱も交えた、
壮大で哀愁漂う最後にふさわしい1曲となっています。
LATE REDEMPTION
最後を飾る13曲目「GATE XIII」は、
クラシカルなインスト曲で、
今までの曲のフレーズが使用される、
アルバム全体を振り返る1曲、
コンセプト・アルバムの最後と言える曲です。
GATE XIII
メタル史に残るような疾走曲が合ったかと思えば、
母国ブラジルの文化を存分に取り入れた1曲、
カヴァーするのが困難と言えるほどの超絶テクニカル楽曲、
先の展開が読めないほどのプログレッシヴなメタル曲と、
ANGRAらしい様々な要素が詰め込まれています!
聴いた当時は約20年前、
SPREAD YOUR FIREの凄さに悶絶したものですが、
時を経て改めて聴いてみると、
メタル、バラード、プログレ、テクニック、民族音楽、
様々な要素を取り込みながらも、
1枚のアルバムとして完璧に仕上げているのは流石です。
今回の来日で中心に据えられたのも納得の名盤です。
今後の活動開始がどうなるかは気になる所ですが、
これからもこういった名盤に出会えることを祈りながら、
火の女神が再び目を覚ますのを待ちたいと思います。
著・METAL IS FOREVER店長 本間(2025/06/20)
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